
AIを活用し、さまざまな技術領域の動きを毎日調べています。
調べ方は単純です。直近7日間に公表されたニュースや資料を集め、「今週は何が動いたのか」を記録します。
ある技術を調べたとき、7日間の中に1社の発表が見つかりました。一方、比較対象にしていた会社の発表は0件でした。
検索エラーはありません。データの取得にも成功しています。記録された「0件」という数字は正しかったのです。
それでも、AIの出力結果は・・・
他社は動いていない。この会社が先に動いた。
そう書きかけたのです。
実際には、別の会社が5カ月前に、より大きな規模の発表をしていました。発表がなかったのではありません。AIが設定した「直近7日」という窓の外にあっただけです。
この記事は、正しい数字から間違った結論を出した、3つの失敗の記録です。
人間だと絶対にしないAIの読み方を紹介します。
失敗1:7日間の「0件」を「動いていない」と読んだ
最初の観測結果は、次のとおりでした。
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直近7日間に、ある会社の発表が1件あった
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同じ期間に、比較対象の会社の発表は確認できなかった
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データ取得の失敗や欠損はなかった
ここまでの記録に誤りはありません。
問題は、その次の一文です。
「直近7日間に確認できなかった」が、いつの間にか「その会社は動いていない」に変わっていました。
期間を12カ月へ広げると、結論は反転しました。比較対象の会社は、5カ月前にすでに発表していたからです。
怖いのは、どこにもエラーが出ないことです。
検索は成功し、件数も正しく、取得日も記録されています。正しい部品だけを使って、間違った結論が組み上がっていました。
AIは、説明しやすい結果ほど、疑わなくなる
窓の中には、1社の発表だけがありました。
すると、「この会社だけが先に動いた」という物語が自然に見えてきます。数字と説明がきれいにつながるため、疑う理由が消えてしまいます。
しかし、データが物語を証明したのではありません。私が、限られた期間のデータに物語を付け加えただけです。
比較や順位を表す次のような言葉には、特に注意が必要です。
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初めて
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先頭
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唯一
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単独で
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他社は静か
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まだ動いていない
これらは、観測期間を変えると真偽が変わる可能性があります。
現在は、こうした表現を書く前に、比較対象について同じ期間を遡って確認するようにしています。
検索だけでなく、各社のニュースや開示資料の一覧も確認します。ただし、一覧も完全とは限りません。過去の資料が別の場所へ移されていたり、古い資料が掲載されていなかったりする可能性があるためです。
確認できなければ、「発表なし」ではなく「確認できなかった」と書きます。
HTTP 403はアクセスを拒否されたという意味であり、発表が存在しないという意味ではありません。404も、対象ページが現在のURLにないことを示すだけです。
「0件」の記録方法を変えた
今回の失敗を受けて、0件を記録するときは、次の3点を併記するようにしました。
併記する情報理由観測期間「いつの0件か」を明確にする情報源へ到達できたか発表がない場合と、確認できない場合を分けるその数字から言えないこと次の人が結論を広げすぎるのを防ぐ
たとえば、単に「該当なし」とは書きません。
直近7日間では関連発表を確認できなかった。ただし、過去の発表が存在しないことを示すものではない。
ここまで書いて、初めて安全な記録になります。
到達できなかったURLやHTTPコードも消さずに残します。失敗した経路にも、「次の人が同じ確認を繰り返さずに済む」という価値があるからです。
失敗2:1つの特許分類を「技術全体」だと思った
2つ目の失敗は、特許調査で起きました。
欧州特許庁のデータベースで、光ファイバーに関係する分類 G02B6/02 を検索すると、2026年8月7日時点で2,589ファミリーが見つかりました。
一方、題名や要約を対象とする語句検索 ta=”optical fiber” では、313,282件が表示されました。
約121倍の差です。
最初は、公式の分類コードで得た2,589件を、この技術の全体像として扱おうとしました。
しかし、特許分類は図書館の本棚のようなものです。一つの棚だけを見ても、関連する本がすべて入っているとは限りません。
製品の構造、製造方法、原材料、周辺部品、利用先のシステムは、それぞれ別の分類に入ることがあります。
実際、製造工程に関係する別分類 C03B37/012 では393ファミリーが見つかりました。この分類は G02B6/02 の下位分類ではありません。ただし、同じ特許文献に両方の分類が付く可能性があるため、393件がすべて追加分という意味でもありません。
一方、313,282件という語句検索も、技術全体の件数ではありません。無関係な文書を拾う可能性があるだけでなく、別の表現や言語で書かれた関連文書を取りこぼす可能性もあります。
分類検索は狭すぎることがあり、語句検索は広すぎることも、狭すぎることもある。どちらも、単独では「分野全体」を表せません。
分類を一つ見つけても、そこで終わらない
現在は、中心となる分類を見つけたら、少なくとも3つの方向を確認します。
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製造:どのような工程や装置で作るのか
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部材:どのような材料や部品を組み合わせるのか
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応用:どの製品やシステムへ組み込まれるのか
すべてを調べられない場合は、「今回は製造分類を含めていない」など、取らなかった範囲も記録します。
何を調べたかだけでなく、何を調べなかったかも、分析結果の一部です。
失敗3:数え方を変えたら、順位が入れ替わった
特許には、少なくとも2つの代表的な数え方があります。
「家族単位」は、同じ発明を複数の国へ出願していても、原則として一つの発明としてまとめて数えます。
「公開単位」は、それぞれの国で公開された文書を別々に数えます。
同じ分類 G02B6/02 を調べたところ、家族単位では2,589件、公開単位では6,338件でした。約2.45倍の差です。
ただし、取得日は家族単位が8月7日、公開単位が7月28日です。そのため、差のすべてを数え方だけに帰すことはできません。それでも、集計単位によって件数が大きく変わることは確認できました。
公開単位では、同じ発明を多くの国へ出願する組織ほど件数が増えます。
つまり、公開単位のランキングが表すのは、単純な発明数ではありません。
発明の数に、海外へ出願した広さが重なった数字
と考える必要があります。
さらに、同じ組織でも、社名の変更、子会社、略称、表記の違いがあります。これらをどこまで一つにまとめるかによって、件数と順位が変わります。
今回の社内集計では、数え方を変えると上位2組織の順位が入れ替わりました。家族単位による近似集計での差は8件、約6.6%でした。
8件の差は実際の差です。しかし、集計単位や名寄せ方法を変えると反転するため、「技術的に優位」と評価できるほど頑健な差ではありません。
順位は、データベースが自動的に教えてくれる絶対的な事実ではありません。分析者が選んだ単位と名寄せ方法にも左右されます。
順位表に必ず付ける4つの情報
ランキングを掲載する場合は、次の4点が必要です。
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家族単位か、公開単位か
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何件を対象にしたランキングか
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社名や組織名をどのように統合したか
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前後の順位と件数差
また、データを一部しか取得していない段階で、順位を出してはいけません。
当社の別の調査では、取得率を54.6%から100%へ上げると、2位だった組織が8位へ移動しました。
ランキングを作るなら、全件取得したことと、分割取得で欠けた部分がないことを確認する必要があります。
「無い」には、少なくとも3種類ある
今回の失敗から、「無い」という言葉を3つに分けるようになりました。
見えている状態実際の意味適切な書き方観測期間の外にあった期間を広げれば見つかる可能性がある直近○日には確認できなかった情報源へ到達できなかった存在するかどうかを確認できない一覧へ到達できなかった観測方法の対象外だったその方法では測定できないこの方法では測れない
どれも、短く書けば「無かった」になります。
だからこそ、意識して書き分ける必要があります。
正しい数字は、正しい結論を保証しない
今回、観測の記録自体は正確でした。
装置は仕様どおりに動き、件数も取得日も正しく保存されていました。それでも、記録を文章へ変える段階で、結論が一段広がりました。
これは、技術調査だけの問題ではありません。
「今月の受注はゼロ」が、「この市場には需要がない」に変わる。
「直近1週間に競合の発表がない」が、「競合は動いていない」に変わる。
「ある分類で特許が少ない」が、「その会社は技術を持っていない」に変わる。
道具が正しく動いていると、「データに基づいている」という安心感が生まれます。その安心感が、結論を点検する動機を弱くします。
そこで、当社では数字の横に、次の欄を追加しました。
この数字から言えないこと
面倒な一行です。
しかし、この一行がなかったために、私は「他社は動いていない」と書きました。
データを集めることと、そのデータから何かを言うことは、別の作業です。
数字を確認した後に、もう一度だけ問い直す。
この数字は事実か。そして、この数字から本当にそこまで言えるのか。
その一手間が、正しい記録を、間違った結論から守ります。
出典・データ源
※件数は取得時点の自社集計です。特許件数は日々変動します。本記事は第三者による検算を経ていません。また、特定企業の技術力や経営判断を評価するものではありません。
本記事はAIを制作補助に使用し、人が内容を確認・編集したうえで公開しています。
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